まき子の「アボリジニのむかしばなし」
第6話 コウモリはなぜ逆さまにぶらさがるの?
このお話の主人公はオオコウモリです。オーストラリアではフライング・フォックス(空飛ぶキツネ)とよばれるとおり、顔はキツネにそっくりです。体長は四十センチほどで、翼を広げると一・五メートルにおよぶものもいます。主に果物を食べています。
オオコウモリがなぜ、逆さまにぶらさがるようになったのか、その由来にまつわるお話です。
この世界が始まってまもなくのころ、神様バイアミー(注1)は鳥の仲間を集め、さまざまなことを教えていました。 それは、どうやって巣をつくるのか、卵をどんなふうに温めるのか、ミミズや毛虫などをどこで見つけたらいいのかなどで、鳥が生きていくために必要なことばかりでした。 そこへ、オオコウモリの子どもがやってきました。 「ぼくも入っていいでしょ?ぼくにも、かしこい鳥になる方法を教えてください」 みんなのじゃまをして、大きな声で言いました。 鳥たちがびっくりしていると、バイアミーはオオコウモリの子どもに向かって、ゆっくりと話しかけました。 「おやおや、おまえは鳥じゃないんだよ。コウモリじゃないか……。よくお聞き。鳥たちに教えるのを終えたら、今度はおまえたち、コウモリの番なのだ。それまでおとなしく待っていなさい」 でも、オオコウモリの子どもは聞きません。 「どうして?ぼくは翼があって、鳥と同じように飛べるんだよ。鳥なんかより、速いかもしれないんだ。鳥たちといっしょに勉強したら、だめだっていうの?」 オオコウモリの子どもが勝手なことを言うので、鳥たちはざわつきはじめました。また、バイアミーに向かって、どうどうとあんな口の聞き方をするのを見て、みんなびくびくしていました。 バイアミーは聞き分けのないオオコウモリの子どもに、また話しかけました。 「もう一度だけ言おう。おまえは鳥ではなく、コウモリなのだ。鳥の仲間に入れるわけにはいかない。おまえの番がくるまで、しばらく待つのだ」 ところが、オオコウモリの子どもは反省するどころか、また声をはりあげました。 「いやだ、いやだ。鳥といっしょに勉強するんだ……」
わがままなオオコウモリの子どもは、とうとう神様バイアミーをおこらせてしまったようです。バイアミーはオオコウモリの子どもをにらみつけました。それから、ひょいとその細い足を持ち上げると、近くの木の枝に逆さまにぶらさげ、くくりつけてしまいました。 「こんなに言って聞かせても、まだおまえはわからないのか。おまえは鳥ではなく、コウモリなのだ。私が鳥たちに教えている間、じゃまをしないでそこにいなさい。そのかっこうのまま反省していなさい」 バイアミーが言うと、鳥たちはゲラゲラと笑いだしました。 オオコウモリの子どもはみんなの前で恥ずかしさでいっぱいでした。でも、負けずぎらいのオオコウモリは、ぜんぜん気にしていないというようなそぶりを見せました。 「ふん、だれもわかっちゃいないんだから。逆さまにされたって、平気さ……」 しばらくして、バイアミーが近づいてきました。 「おとなしく待っていたかね。やれやれ、少しは反省したのか」 オオコウモリの子どもは待ってましたとばかりに口を開きました。 「おもしろかったよ。逆さまに見る世界って、なんてすばらしいんだろう。こんなこと、ほかの生き物じゃできるわけないものね」 バイアミーはあきれてしまいました。 「そこまで言うんだったら、よかろう……おまえはこれからずっと逆さまになっていればよい。ただし、ぶらさがりやすいように、足のつま先を少し曲げてあげよう。そのほうがつかまっていても楽にちがいないから……。これで、鳥とコウモリのちがいもはっきりしていいだろう」
さて、今、コウモリが逆さまにぶら下がるのは、このときのわがままでいたずら好きなオオコウモリの子どものせいだと言われています。また、こうもりは動物たちみんなが寝静まった夜に活動し、昼はほら穴や木のみきの穴にすがたをかくしています。それは、逆さまにぶらさがっているのを、みんなにばかにされたり、笑われたりするのがいやだからだそうです。(おわり)
注1:アボリジニの人々はバイアミーが最初にこの世界をつくり、動物や植物などすべてのものに生命を与えたと信じている
