まき子の「オーストラリア育児・教育あれこれ」

意欲を育てる「ほめ言葉

オーストラリア人はほめるのが上手・・・プレイグループのお母さんたちをはじめ、プレスクールの先生、水泳教室のインストラクター、クラリネットの先生などが、子どもたちを実に上手にほめる。子どもの気持ちをよく汲み取り、ほめることで、子どものやる気をうまく引き出すのには感心させられることが多い。

# プレスクール(Preschool)というのは日本の幼稚園に当たり、4歳児が通う。公立の場合は午前中だけで、週に3〜4日というところが多い。うちの子どもの場合は水曜日、木曜日、金曜日と週に3日通っていた。

子どもの数は20〜25人で、先生は2人。そして、お手伝いとして親が1人ボランティアとして加わることになっていた。私はこちらの幼稚園の仕組みに興味があったし、子どもの様子が見られるいい機会だったので、積極的に参加するようにしていた。

プレスクールでは、子どもたちが自由に絵を描いたり、工作をしたり、積み木で遊ぶ時間がある。始めて何分もたたないうち、先生の名前を呼びはじめて騒がしくなってくる。例えば、積み木を高く積んで面白い形を作ったりすると、「見て、見て」と声をかけてくる。また、絵の具でぬりたくった絵を描き、それに自分で満足すると、「上手でしょ」と見せにくる。

先生たちはそんな子どもの気持ちがよくわかり、その期待に応えて見事な表現で子どもをほめる。"Great!"、"Beautiful!"、"Fantastic!"、"Wonderful!"、"Lovely!"、"Amazing!"、"Well done!"、"Very Good!"などのほめ言葉を使って、表情たっぷりに動作も大げさにほめちぎるのだ。子どもも認められたことで十分に満足し、ニコニコ顔でまた別のことに取りかかる。そんな光景を目の当たりにすると、こちらまでうれしくなってしまう。

先生が忙しそうだったりすると、私にまで見せに来るので、先生のまねをして言ってみる。どれが最高のほめ言葉になるのかランク付けなどはわからないが、その時その時に思い浮かんだ言葉でほめてあげる。

誰だって、ほめてもらえたらうれしい。大人だって、ほめられたらいい気分になる。子どもだったらなおさらだ。我々はほめてもらったら、また前よりももっとほめてもらいたくて、がんばっているようなものなのだから・・・。

また、うちの子どもは2人とも3歳過ぎから水泳教室に通っており、クラスが上がるごとにインストラクターも何人か替わったが、そこで教える若いインストラクターたちも、子どものいいところをほめることで意欲をうまく引き出し、練習に集中させ、そして泳ぐことを楽しませている。

また、娘は小学校でブラスバンドに入ったため、3年生からクラリネットの個人レッスンを受けているが、その先生ときたら徹底して子どもをほめる。楽譜通りにできなくても、ここの音がよく出せたとか、前よりもここはよくなったとか言ってほめてリラックスさせ、演奏を楽しむことを教える。ほめ方も見る角度を変えるといろいろあるものだと考えさせられる。

我が家での場合はどうだろうか。子どもが家で宿題をしたり、漢字の練習をして見せに来る。まず、ほめてやらなくては・・・と頭にあるのだが、間違いを見つけた瞬間、「ちょっとちょっと、ここ、よく見なさいよ!」「ここ、違うんじゃないの、ほら!」などと口から出ているのである。ほめることはつい後回しになっている(忘れてしまう?)。

主人は大学で日本語、日本文化について教鞭を執っているが、やはり、教師だけあって、いい点を何かしら見つけてほめ、その後で、ここはこう、あそこはこう直した方がいいと注意する。言われた方も素直に聞くので、飲み込みが早いというわけだ。私も見習わなければといつも思うのだが、「上手なほめ方」というのは案外と難しい。

子どもが何か目的、目標をもって行動したり、挑戦したりしている時、結果の善し悪しは二の次にして、「ああ、一生懸命頑張っているな」と感じたり、あるいは少しでも上達しているなと思ったら、すぐほめてやることが大事だという気がする。ただ、子どもは自分自身で、ほめられるとしたらどの程度か知っているので、ほめ言葉が過ぎても足りなくても満足しない。取って付けたようなお世辞は子どもには通用しないが、ほめ言葉を惜しまずにどんどん使っていきたいものである。

ある雑誌で読んだのだが、日本のスポーツの選手育成法について、外国人コーチがよく指摘することは次のような事だそうだ。

「日本ではまず、選手の劣っているところを指摘する。君はここが欠点だから、それを徹底的に直せという指導の仕方だ。しかしそれでは、選手はそれ以上伸びないと思う。私たちは、選手の優れている点を徹底的にほめ、自信をつけさせる。その後で、でも、こういうところがちょっと弱いから、直すようにしたらどうか。そうすればきっと、もっとよくなるよ、とアドバイスするんだ」

日本人選手は外国での大きな大会で期待通りに活躍できなかったり、萎縮して本来の実力を出し切れなかったりすることが多いように思われるが、こういった選手育成法の違いなどにも原因があるのかもしれない。

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当エッセイは日豪プレス2000年2月〜7月に連載されました。今回、ご本人よりお寄せいただいた同原稿をもとに豪州屋にてHP作成&再公開したものです。

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