オーストラリア時事英語あれこれ

〜豪州特有の英単語や言い回しからオーストラリアを知ろう〜

Live Sheep Trade 生きた羊の貿易 ライブ・シープ・トレード

豪州屋

前号ではオーストラリアの肉牛牧場の話を書きましたが、今回は羊の話です。

 オーストラリアはかつて「羊の背に負われている国」と言われていたほど牧羊の盛ん な国です。上は羊毛産業のオーストラリア経済への貢献度の高さを形容した言葉です が、食用にする羊もたくさん飼育されています。じつは、その多くが生きたまま西オ ーストラリア州のフリーマントル港から輸出されていきます。これを Live Sheep Trade (生きた羊の貿易)と言っています。

 オーストラリア全体のLive Sheep Tradeは年間10億ドルに上り、その半分以上が西 オーストラリア産の羊です。州で生産される肉用羊の68パーセントはこの方式で輸 出されるということです。Live Sheep Trade は何万頭もの羊を狭い船に詰め込んで 熱帯の洋上を何週間も運ぶので途中で衰弱死する羊もあり、虐待にあたるとして以前 から批判がありました。

ところが数カ月前、五万二千頭の羊をサウジアラビアに運んだコーモ・エクスプレス という船が、積み荷に病気が発生したという理由(オーストラリア側は否定)で陸揚 げを拒否され、立ち往生する事件がありました。以来三ヶ月近くも洋上を漂いながら 20カ国以上に買い入れを懇願し、最後にはただで良いからといってイラクに(いま 実権を行使しているアメリカとの友好関係をてこにして)引き取ってもらおうとしま したが拒否されてしまい、すごすご引き揚げて来ようとしています。

それを聞いた西オーストラリア州が今度は猛反発し、中東でどんな病気を仕入れてき たかわからないから断固入港を阻止するどころか、蚊が飛べる距離まで陸地に近づく ことは許さないと頑張っています。何ヶ月も狭いところに押し込められたまま行き所 のない羊たちの受難はまだ続きそうです。

以前から批判があるにも関わらずなぜLive Sheep Trade がいまだに続けられている かというと、中東向けの食用羊は宗教的な規定(イスラム教ではhalal、ユダヤ教で はkosherと言われます)に従って屠殺されなければならないという事情があります。 オーストラリアにもその規定に従っているとの認証を受けた屠殺場はあるのですが、 そのようなところは宗教的規定の上に虐待禁止など国内の諸規制にも適合しなけれ ばならず、生きたまま輸出するよりだいぶコストが高くなってしまうのだそうです。

それだけでなく、公的な監督機関であるライブコープという業界団体が輸出事業も同 時に行っており、強大な既得権益を持っているという内部事情もあって、なかなか制 度改革に至らないようです。

そのような人間社会の難しい事情に翻弄され、何ヶ月も洋上を漂流し続ける羊たちは かわいそうです。今回の事件が契機となって、ようやく政府もLive Sheep Tradeの 問題を直視する必要性を認識し始めたようです。今後このような事件が起こらないよ う、早急な対処が望まれます。

(速報:このマガジンの発行直前になって、ようやく行き先が決まったとのニュース が流れました。アフリカの紅海沿岸の国、エリトリアに百万ドルの迷惑料(?)を 払って引き取ってもらったようです。まあ、何はともあれ、めでたしめでたし。)

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