オーストラリア時事英語あれこれ

〜豪州特有の英単語や言い回しからオーストラリアを知ろう〜

Mandatory Detention 閉じ込めておく政策? マンデトリー・ディテンション

豪州屋

2003年初旬、西オーストラリア州北部に難民船がやってきました。数年前には年間一万人を超え た所謂「ボートピープル」の到着ですが、最近は珍しく、今回は十八か月ぶりとのことです。 沿岸警備隊の目をくぐり抜けて本土から一キロ以内のところまでやってきた難民船ですが、上 陸は許されず、数千キロ離れたクリスマス島に曳航され、そこで収容所に入れられて次の処置 を待つことになります。

 このように、ビザを持たずに入国した人は鉄条網を張り巡らせた監獄まがいの収容所に強制的 に収容し、正式な難民認定がされるなど、なんらかの理由で入国が認められない限り何年でも 閉じ込めておく政策を Mandatory (強制的・義務的) Detention (収容) と言います。

 この政策は、なんら罪を犯していない人を老若男女問わず無期限に自由を束縛するという意味 で、基本的人権を蹂躙する人道上許しがたい政策であり、アムネスティ・インターナショナル が年次報告書で非難し続けているのをはじめ、国連人権委員会でも問題とされています。それ でも現政府がこの政策をいっこうに止めようとしないのは、これが非常に国民に人気が高い政 策だからです。

実際、2001年の国政選挙の際、与党保守連合は長期政権の疲弊が顕著で失策が続き、労働党へ の政権交代が確実視されていましたが、ふって湧いたように連続した難民船に対して軍隊を動 員した強制収容、オーストラリアに経済的に依存している極小国ナウルの大統領が持病をオー ストラリアの病院で治療していて累積している借金を棒引きするのとひきかえにその人たちを 受け入れさせるという、いわゆる Pacific Solution (パシフィック・ソリューション:大平洋 での解決策) などで一気に人気を回復しました。

これに対し、強硬策が国民の支持を集めているのを見た労働党は、全く独自色を打ち出せず、 政府の政策の追認に走り、実力行使が違法であったとの裁判所の判決が出ると、当該実力行使 を合法化する遡及効のある政府法案に賛成して成立させてしまいました。しかしこのような弱 腰の態度は一旦与党に傾いた流れを変える力はなく、かえって心ある野党支持者を憤慨させて 緑の党などの強硬反対派の小野党に走らせることになり、惨敗を喫してしまいました。

オーストラリアは移民が作った国であり、外国からの移民受け入れに積極的なところもある反 面、非合法入国者、特にこのように北から船でやってくる避難民に対しては、驚くほど敵意を むき出しにするのはどういうことなのでしょうか。ボートピープルは東南アジアや近年ではパ キスタンやイラン・イラクなどイスラム教国から来ることが多いのですが、1979年まで国策だ った白豪主義に象徴されるようにオーストラリアで根強い人種差別意識も全く関連性がないと は言い切れません。もちろん、オーストラリアにも心ある人は多く、2001年の事件を期に結成 された非営利団体「ア・ジャスト・オーストラリア」(www.ajustaustralia.com)は、短期間に オーストラリアで最も賛同者数の多い人権擁護団体となり、今もより人道的な移民政策を求め て積極的に活動しています。

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