オーストラリア時事英語あれこれ
〜豪州特有の英単語や言い回しからオーストラリアを知ろう〜
SIEV X 不法入国が目的であると 疑われる船 シーヴ・エックス
2003年12月、エジプトのカイロでアブ・カセイという一人のエジプト人に people-smuggling (人身密輸−亡命希望者から金を取って第三国に密 入国させる商売)のかどで懲役七年の判決が下りました。
この判決がオーストラリアで話題となったのは、彼が2001年10月にオー ストラリア沖で沈没し、353人の犠牲者を出した SIEV X という密航船 の首謀者だったからです。
SIEV とは、Suspected Illegal Entry Vehicle (不法入国が目的であると 疑われる船)のイニシャルで、X はその年に発見されたそのような船の 第十番目であることを示しています。この年はそのような船が異常に多 かった年で、8月にも同様の船が沈没しかかっているのが発見され、通 りかかって救助した貨物船がクリスマス島に向かったものの政府は上陸 を拒否、二週間のにらみあいの末、軍が出動して強制的にその人たちを 太平洋の極小国ナウルに移送するという事件が起こったばかりでした。 (ちなみに、この人達はまだ収容所に入れられており、オーストラリア 政府の誠意ある対応を求めてハンガーストライキが数日前まで続けられ ていました。)
SIEV X は見るからにぼろぼろの老朽漁船だったそうです。通常は乗組員 十数人程度という大きさの船に約四百人が詰め込まれました。インドネ シアでこの船を見た難民達はこんな船には乗れないと抗議したけれど銃 で脅されて無理やり乗り込まされたそうです。数少ない生存者で今は難 民の認定を受けてオーストラリアに住んでいるある人は、新聞のインタ ビューに「懲役七年の刑は軽すぎる」と答えていました。
上述のようにカセイは people-smuggling で罪に問われたわけですが、 実際これだけの犠牲者が出ているのだから、殺人罪に問われるべきだと 主張する人もいます。沈没したのはオーストラリア沖ですからオースト ラリアにも刑事管轄権が生じる理由はあり、その気になればオーストラ リア政府はエジプトにカセイの引き渡し(extradition)を求めることが 出来たはずでした。しかし、難民問題に関しては徹頭徹尾強硬策を貫く 現政権はこれら犠牲者のために何もしようとはしませんでした。
そればかりでなく、事件当時からオーストラリアは SIEV X について知 っていたのに見殺しにしたという恐ろしいうわさが絶えません。生存者 は遠くから見守る軍艦の影を見たといいます。それを裏付ける匿名軍関 係者の話が報道されたこともあります。真相は闇の中ですが、今の政府 の難民政策がそのような話にさもありなんとうなずかせるほど、木で鼻 をくくったように冷たく、非人道的なのは悲しい現実です。
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