オーストラリア時事英語あれこれ
〜豪州特有の英単語や言い回しからオーストラリアを知ろう〜
transit 通行・通過 トランジット
今月8日の金星の太陽面通過は、122年ぶりの天体ショーということ で、ここオーストラリアでも大きな話題になりました。「通過」「通行」 という意味でごく一般的に使う transit という言葉がここでも使われ、 the transit of Venus と呼ばれていました。
8年ほどの間隔で続けて起こり、その次は110年以上間が空くという この現象ですが、実はオーストラリアの建国史にも深い関わりがありま す。
1769年の the transit of Venus の際、ジェームズ・クックという英 国海軍士官が観測のためタヒチに派遣されました。それは、地球上のな るべく離れた二地点で太陽面の金星の軌跡を正確に観測し、三角法を用 いて太陽までの距離を計算しようという計画でした。(ちなみに、さす がは英海軍屈指の天文測量士として選ばれたクックのこと、彼の観測結 果から割り出した太陽までの距離すなわち天文単位は、かなり正確なも のだったそうです。)天候に恵まれ首尾良く任務を果たしたクックは帰 途オーストラリア大陸に立ち寄り、ついでに(?)英国王の領有を宣言 して行きました。
当時オーストラリアは国際法上の無主地(terra nullius = 所有者のいな い土地)とされており、初めて領有宣言をし、実効的に支配した国が領 域権限を取得する(「先占 occupation」という)ことが認められていた ことは以前にも言及しました。(第27号)
もちろんこの領有宣言は、何千年も前からこの大陸に居住していたアボ リジニの全く与り知らぬところで行われた、迷惑極まりない宣言でした。 それ以降の英国によるオーストラリア植民地化の歴史はそのままアボリ ジニをはじめとする先住民の疎外・収奪の歴史でした。その根拠となっ ていた terra nullius の法理を覆した先述の「マボ判決」がいかに画期的 なものであったかは想像に難くありません。
科学者達は今回の transit を、太陽以外の恒星に地球型の惑星を発見す るための参考にしようと注目しているそうです。科学の進歩に目を見張 ると共に、それを使う側の人間の叡知が、それに伴って発展しているの かどうか、一抹の不安を禁じえません。
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