豪州屋Roo子のオーストラリア雑感集
オーストラリア制作映画 Japanese Story を観て
カンヌ映画祭「ある視点」部門でも上映されたJapanese Story という映画が一般公開になったので観に行きました。オーストラリア映画で、撮影のイアン・ベーカー氏以外は、スー・ブルックス監督・アリソン・ティルソン脚本以下、女性スタッフが多く参加しているそうです。音楽に坂本龍一氏のクレジットが見えましたが、どの曲だったでしょうね。
何かに疲れて日本からプライベート旅行でアウトバックにやってきた日本人男性と、私は芸者じゃない、と、嫌々ながらに顧客の御曹司のドライバー兼案内係に借り出されたオーストラリア人女性の物語です。日本人男性を演じているのは、綱島郷太郎さん。2001年10月にABCで放映されたCHANGI(チャンギ:第二次大戦中シンガポールにあった日本軍捕虜キャンプ
に収容されていたオ-ストラリア軍兵士のメイトシップがテーマのドラマ)にも出演していたそうです。ルックスはなかなか素敵ですが、映画がはじまってしばらくの間、彼が演じるタチバナ・ヒロミツの言動に、日本人の私はひどくembarrassing
な面持ちにさせられます。
これから映画を観る方で細部を楽しみたい方には申し訳ないのでこのパラグラフを読み飛ばしていただけたら、と思いますが、ちょっとだけ披露しますと・・・
シーンA:ポートヘドランド空港で、スーツケースを傍らに、案内の車を待つタチバナ。そこへ地質学研究者のサンディが4WDの車を滑り込ませて「ハーィ ! 遅くなってごめんなさい。」しかし、男性のドライバーが来るものとばかり思っていたタチバナは、突然現れたサンディにとまどいを隠さず、重たいスーツケースを車に運びもせず、あきれたサンディが積み込むのに手を貸しもしない。
シーンB:運転しながら気もちをほぐそうとサンディが質問する事に対して、タチバナは、ひとことだけ「ハイ」と日本語で答える!英語が話せることは後のシーンを見れば明らかなのだが、冒頭では「ハイ」以外言わないので、会話が成立しない。・・・ところが、立花は、サンディが話し掛けているのに、手元の携帯が鳴ると突然日本語でイキイキととしゃべりだす。「それがさあ、女なんだよ、運転手が」「それがまた気が強そうでさあ」「えっ?・・・いや、尻がでかい」
観客の日本人男性は穴があったら入りたくなる?くらい、妙にリアリティがあるんですね、このあたり。このあと、タチバナの無理な要求に負けて二人がアウトバックの赤茶けた未舗装道路を車で飛ばしていった後どうなるか、は見てのお楽しみなんですが、なるほど、オーストラリア人からは日本人はこういう風に見られているのね、というのが嫌でも見えてくる映画です。多くの映画評にもあるとおり、サンディ役のトニー・コレットはなかなか演技が上手い。彼女の映画、と言ってもいいかもしれません。特に後半の描写は丁寧だし、日本人の観光ルートにはまず出てこないピルバラ砂漠の鉱石採掘現場など風景は圧巻ですし、映画の出来は悪くないと思います。サンディが「大体、ハイってどういう意味?」と聞くのに対しタチバナが答える「あなたの言うことを聞いてますよ、続けてください、Yes」「でもそれがNoの意味にもなることもあるんだよ、誰もNoとは言わないんだけどね」のように、日本理解のエピソードも上手に織り込まれています。
ただ、私が惜しいと思うのは、タチバナの人物像にリアリティが無いことかな、なんです。前述のように、リアリティがあるシーンは随所にちりばめられているんですが・・・いまどき、英語がわかるのに、日本語でハイと答える人なんかいますか?一度でなく何度も。そして、アウトバックにプライベートで来るのに背広姿で来る日本人はまず居ないでしょう、30年前ならいざしらず。後半の展開のために、前半が誇張されているのはわかるけれども、もう少し、まともな姿にして欲しかったなあ。そして中盤の展開も唐突だったなあ。この映画は結構な評判をとっているのだけれど、観た人は、サンディがタチバナに惹かれていく気持ち共感できたのかなあ。もう一歩粘って、ミステリアスなだけでなく、魅力的な人物像を描いて欲しかったなあ。そうすれば、もっといい映画に出来たのに。それとも、今でも一昔前のステレオタイプで見られるほどの振る舞いしかしてないのかしら、現代の日本人・・・
ハリウッド映画に出てくる日本人は、大げさにお辞儀してばかりいたり、お金になると分かると突然ニコニコしたり、これまでギャグのネタでしかなかったことを考えれば、これだけ真っ向からメインキャラクターにすえ、タイトルもJapanese Story なんて銘打った作品が出来たことは、もしかしたら、感動に値するのかもしれません。でも、やっぱり違和感は否めなかった。文化を理解して描くということのムズカシさでしょうか。私はふと、Native American, African Americanやアボリジニの人たちが、映画に抗議していた姿を思い出しました。きっと、他にも理解したつもりになって実は理解してないことがたくさんあるんだろうなあと思います。トロント国際映画祭にも出品されているこの映画、世界中の人はどんな感想を持つのでしょうね。
豪州屋より
豪州では話題になっていましたので豪州屋もこの映画を知っていましたが、こちらに映画の感想の記事が載っておりましたのでご紹介。
http://www.smh.com.au/articles/2003/09/19/1063625206042.html
