豪州屋Roo子のオーストラリア雑感集
難民受け入れと豪州〜その1
オーストラリアに住んで以来、常にメディアを賑わしている話題の一つが難民の受け 入れについて、です。世界で13番目に多く難民を受け入れている国なんだそうです が、ここは決して天国、ではないようです。「多民族国家」を標榜するオーストラリ アでさえ、というべきか、だからこそ、というべきか・・・きれいごとではすまされ ない虚々実々があることを思い知らされています。
2001年10月頃、ボートに乗って不法に入国しようとした一団に対して首相と移民相は 頑として拒否、ニュージーランドとパプアニューギニアが受け入れを表明しました。 この際、苛立った難民たちが、子供に救命胴衣をつけて海に投げ入れ、同情を乞うよ うな映像がTVに流れ、選挙戦まっただ中だった首相は「このような挑発には負けな い」と毅然とした態度をとり、この姿勢が市民の喝采をあび、現政権が維持されるこ とになりました。
ゲジゲジ眉毛が特徴でどことなく日本のおじさん風のジョン・ハワード首相は3期連 続で政権を維持していますが、その主たる理由が「不法難民に対する断固とした政 策」にある、と聞いたときは、何と言っていいかわかりませんでした。オーストラリ アは移民の国ですが、誰でも彼でもビザが取れるわけではなく、アメリカのようにく じがあるわけでもなく、オーストラリアの社会に貢献できる技術や若さを持った人の み(ポイント制)が滞在を許されるわけです。難民枠は移民とは別にありますが、難 民ビザがとれるまでに数年を要する人たちも多くいるのです。苦労してビザを手に入 れた移民・難民や正当に申請して何年も待たされているその予備軍から見れば、不法 難民を容認するわけにはいかない、という地元民のコンセンサスは納得できます。
しかし、前述の「救命胴衣をつけた子供達が海に投げ出された映像」は、実は難民船 が沈みかけたので仕方なく大人も子供も海に浮かんで難を逃れた映像の一部に過ぎな かったことが半年後に判明し、選挙戦を有利に導くために首相と移民相に「作為的」 に使われた疑いが濃くなりました。政治というのは、どこの国でもそういう部分はあ るのでしょうが、駆け引きの道具 にされている、その背景にある国民感情を考えると き、複雑な思いにとらわれま す。現在は、難民審査基準が厳しく受入数が極端に少ない日本ですが、これから徐々 に増えていくと仮定して、オーストラリアと比べて多民族共存ということに全く慣れ ていない国であり、また社会システムを変えるのに時間がかかることもあり、なによ りも、排他的な国民性が、難民の定住を阻む要因になりはしないかと気になるところ です。
★難民受け入れと豪州〜その2
2002年1月に、アデレードから車で5時間の砂漠に作られた収容所(=Detention Center)で、アフガニスタンからの難民庇護申請者(Asylum Seeker)たち200人が収容 所内の劣悪な環境と、審査に時間がかかりすぎることに抗議して、集団自殺をほのめ かしハンガーストライキを起こしました。うち70人ほどは唇を木綿糸で縫い合わせて (!)おり、かなりショッキングな映像がTVに映し出されました。難民の子供達がハン ストに巻き込まれないよう別のセンターに移したり、メディアと難民保護団体等がお しかけ、後日、UNTAC(国連高等弁務官事務所)からも視察にくるほどでした。
更にハワードが「自主的にアフガニスタンに帰国すると決めた者には$3000を支給す る」なんて言い出したものだから、私は混乱しました。結局、住み着いて欲しくはな いわけね?前に、コソボからの難民のときも帰国するなら1000ドルずつ持たせたら しいし。でも、そのお金はどこから出てるわけ?
政府が審査の「早期実施努力」約束をしたため16日間に及ぶハンストは終わったもの の、国際世論は豪州の難民政策に批判的、とメディアはとりあげていました。迫害や 飢餓などの生活困難を逃れてきた彼らを、まるで犯罪者のように扱っている、との批 判です。数ある難民支援団体がDetentionCenter前に陣取ってアピールを続ける 様子をメディアは報道し続けました。
What's going on?と尋ねる私に、周囲の数人(白人・40代・比較的富裕な層)が答え てくれたのは、 「豪州政府の対応は、厳しすぎる。犯罪人でもない亡命希望者をあんな砂漠の真ん中 の劣悪な環境におくなんて、ハワードは人種差別主義者といわれても仕方ない。豪州 は国際世論に応えて、難民の扱いを改善すべき」「アフガニスタン人はほとんど country peopleだ。豪州には広い土地がある。country で受け入れ、キャンベラのよ うな人工の街を作ってしまえば街もHappy, 難民もHappyじゃない」の言葉。 しかし、これは、「有色人種」である私に向けての言葉であるかもしれないと思い、 ある放送局のWeb Forumをチェックしてみました。
すると、上記のような同情的な意見よりは、政府の措置に賛成、「豪州に住みたいな ら豪州の法律に従うべき。裏口から入ってきてるのに(必要なビザなしで)開き直る とは何事だ。収容キャンプより条件の悪い自国に帰ってもらうしかない」というよう な意見が大勢を占めていました。アフガニー希望者の差し迫った事情を特別考慮する きっかけには全くならなかったように私には思えました。
世論調査では、NSW州とビクトリア州で違う結果が出ており、私の住むビクトリア 州は難民を含む移民をもっと増やして社会の活性化を目指すべきという意見が多いそ うです。 シドニーにはアジア系の難民や移民が集中して定住する傾向にあるため、「非白人」 が増えすぎた、と感じる住人からの排他論が強いのかもしれません。 ちなみに日本からの観光客の多いブリスベン、ケアンズを抱えるクイーンズランド州 には、ヨーロッパ系の移民が多く、ワンネーション党(ノーモア有色人種を掲げる政 党)があるほどで、上記2州に比べ人種差別度が高いといわれています。
これだけのデータでこの問題をジャッジすることは到底無理ですが、多民族国家オー ストラリアの行く先は非常に興味深く、事あるごとにアンテナを張っておきたいと 思っています。
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豪州屋のおまけ
難民問題は豪州屋にとって(というか日本人において)、日本政府の難民受け入れ姿勢とオーストラリア政府の苦悩を比較すると、一言で言い表せないツラさをいつも持ってしまいます。難民としての国際定義と彼らに対しての各国の従量制的な受け入れの仕組みが出来上がれば、日本も受け入れているんだから「オーストラリアもこうあるべきだ!」と主張できるのですが、、、、なにぶんにも日本は難民受け入れの超発展途上国ですから、2002年5月にあった在中国日本領事館の「北朝鮮亡命者」たちへの政府の対応を見てもわかるように「ますます」肩を落としてしまいます。
一方では「日本企業」から生まれる製品は世界中で売られ、また多くの企業は世界各所に工場をもっています。ここオーストラリアにもトヨタをはじめ日本の工場が多くありますが、そういった「お金」や「雇用」にからむ国際交流は活発でも、上記した「難民」については彼らはお金なんて持ってていませんから当然対応が急転します。ハワード首相がお金で解決しようとしたのと同様、日本なら当たり前のように「税金」に頼って解決する仕組みを法制化するのかもしれません。
さて、よく豪州屋では「日本が嫌でオーストラリアで暮らしたい」なんて声を頂戴します。しかし、「あなたは(私も含め)日本人として生まれてなんて幸せなんでしょう」といつもこの難民問題に触れる度に豪州屋は考えてしまいます。By 豪州屋
