杉本先生のご研究内容の中間報告
ラ・トローブ大学教授の杉本先生のご研究内容を豪州屋で公開。
先生曰く、調査アンケート等は今後も継続して行ってますので、今後もアンケート協力をお願いしますとのことです。ご覧になった方は先生の掲示板にメッセージを書き込むなりしてご協力お願いします。 蛇足ですが、豪州屋が豪州の大学にいたときに、在豪日本企業へアンケートをとったことがありました。約400通ほどDMをだしまして、多くの企業様から返答をいただきその後の論文作成に大変役立ちました。大学を修了できたことより、論文を書き上げた達成感の方が大きかったなぁ。 さて、アンケートに協力したからといって先生の大学に推薦入学できるなんてことはないと思うけど、皆様のご協力をお待ちします。By 豪州屋
下線以降が先生の原文です。尚、先生のサイトは本文中に記載されております。
『文化意識調査』――中間報告
杉本良夫
はじめに
多くの方のご協力によって、1999年8月25日現在、偶然にもちょうど555件の有効回答を得ました。まだ、データ収集は進行中ですが、お約束通り、とりあえず、これまでの資料を集計し、中間報告をさせていただきます。
集まった計量データは、収集の方法がインターネットという媒体に依存しているため、その利点と欠点が混在しています。一方では、このデータ収集法は、回答者は面談者の反応を気にすることなく、全くの自発参加によって応答することができるという側面を持っています。
しかし一方、計量分析の王道である無作為抽出によって得られた資料ではないため、サンプルに現れたパターンが、どのような人口母体を代表しているのかという大問題が残らざるをえません。しかし、いま日本社会に「サイバー階層」という集団が発生してきているということは、疑いのない事実です。この階層はコンピュータを自由に操り、電子メールを日常的に使用し、インターネットを駆使して情報収集や交信をすることをごく普通の生活の一部としている人たちによって構成されています。もちろん、その規模は日本社会全体から見れば、ごく一部にしか過ぎません。この階層の価値観や生活意識が、日本人口全体を代表するものでないことは、言うまでもないことです。けれども、この階層に限って、ある程度の推測を行うことは可能かも知れません。
この種の調査の可能性と危険性については、『読売新聞』の1999年8月2日付夕刊文化欄に書きました。原文は次のサイトにあります。
http://www.latrobe.edu.au/www/socpol/yscyb.htm
この中間報告は、データ収集の途中での一時的なまとめであり、最終結果ではないことを強調しておきたいと思います。この調査は今年の11月中旬まで続ける予定で、そのあと年内にはいろいろな具体的観察や発見について、ご報告できるはずです。そのような限定付きで、お読みください。中間的な性格が強いので、数字は特に断りのない限り、すべてパーセントで示してあります。無効回答は計算には含まれていません。
以下の報告は三つに分かれ、初めに回答者の「社会的属性」の一覧を掲げます。回答者の性別、年齢、現住地、学歴、職業、職種、企業規模、海外体験歴などが、どのように分布しているかを示します。サイバー階層の社会学的横顔を知る上で、興味深いものがあるかも知れません。
続いて、「文化意識」に関する問いについての回答がどのように分布しているかを単純集計します。これらの数字は、いろいろに読めると思いますので、特にコメントは付けません。
最後に、「社会的属性」と「文化意識」のクロス集計のごく一部を例示して、これからの分析の出発点を示したいと思います。この部分はまだ分析を始めたばかりなので、すべて仮説的な意味しか持っていません。それでも、いくつかの方向は見えているようにも思われます。
この中間報告のためにデータを締め切ってから、4日間でとりあえず数字として示せるものを、なるべく生のままで記録しておきます。質問票はまだ次のサイトにおいてあり、データ収集は続けますので、お友達やお知り合いに参加を奨励していただければ幸いです。野球で言えば、この調査はまだ5回裏を終わったところぐらいです。
http://www.latrobe.edu.au/www/socpol/poll.htm
最終結果は、来年1月1日に私のホームページに掲示するほか、中間報告入手のご希望のあった方に対しては、メールでもお送りする予定でおります。ご協力ありがとうございました。
回答者の社会的属性の単純集計
性別
| 女性 | 46.6 |
| 男性 | 53.4 |
年齢層
| 10代 | 8.5 |
| 20代 | 36.9 |
| 30代 | 27.7 |
| 40代 | 14.2 |
| 50代 | 9.0 |
| 60以上 | 3.6 |
都道府県別分布
| 北海道 | 1.8 | 石川 | 0.5 | 岡山 | 0.5 |
| 青森 | 0.9 | 福井 | 0.4 | 広島 | 0.5 |
| 岩手 | 1.3 | 山梨 | 0.2 | 山口 | 0.5 |
| 宮城 | 2.7 | 長野 | 0.5 | 徳島 | 0.2 |
| 秋田 | 0 | 岐阜 | 0.4 | 香川 | 2.4 |
| 山形 | 0.4 | 静岡 | 1.8 | 愛媛 | 1.1 |
| 福島 | 0.9 | 愛知 | 3.6 | 高知 | 0 |
| 茨城 | 4.0 | 三重 | 0.5 | 福岡 | 0.9 |
| 栃木 | 0.2 | 滋賀 | 0.7 | 佐賀 | 0.2 |
| 群馬 | 0.5 | 京都 | 7.1 | 長崎 | 0.2 |
| 埼玉 | 5.3 | 大阪 | 6.0 | 熊本 | 0.5 |
| 千葉 | 6.5 | 兵庫 | 2.9 | 大分 | 0 |
| 東京 | 20.4 | 奈良 | 1.1 | 宮崎 | 0.5 |
| 神奈川 | 10.7 | 和歌山 | 0.2 | 鹿児島 | 0.4 |
| 新潟 | 0.5 | 鳥取 | 0.2 | 沖縄 | 0.7 |
| 富山 | 0.5 | 島根 | 0.2 | 海外 | 8.2 |
市町村別分布
| 市・区 | 89.6 |
| 町 | 9.2 |
| 村 | 1.1 |
学歴分布(現在学生であるものは、在学中の学校のレベルに含めた)
| 小学校 | 0.2 |
| 中学校 | 0.2 |
| 高等学校 | 8.1 |
| 短期大学 | 10.3 |
| 専門学校 | 8.3 |
| 大学 | 55.7 |
| 大学院 | 16.0 |
| その他 | 1.3 |
職業分布
| 学生 | 28.6 | ブルーカラー(工員) | 3.1 |
| 専業主婦 | 4.3 | 教員 | 7.8 |
| 自営業(雇い人あり) | 3.1 | 専門職 | 7.7 |
| 自営業(雇い人なし) | 4.5 | 販売・サービス職 | 3.3 |
| 管理職 | 8.8 | 無職 | 2.7 |
| ホワイトカラー(非管理職) | 22.1 | その他 | 4 |
業種分布
| 製造業 | 10.8 | 医療関係 | 2.4 |
| 公務員 | 5.0 | メディア | 2.0 |
| 中学高校 | 2.2 | 法人・各種団体 | 0.7 |
| 大学 | 6.1 | 金融・証券・保険 | 0.6 |
| 販売流通業 | 6.3 | 研究所 | 0.4 |
| 情報産業 | 7.4 | 教育産業 | 0.9 |
| 運輸運送業 | 2.3 | 学生 | 28.8 |
| サービス業 | 11.5 | その他の業種 | 3.3 |
| 農林水産業 | 0.2 | 勤めていない | 5.9 |
| 建設建築業 | 2.0 |
企業規模
| 中小企業 | 54.5 |
| 大企業 | 27.1 |
| 地方公務員 | 10.9 |
| 国家公務員 | 7.6 |
海外体験
| なし | 14.8 |
| 一度旅行した | 14.3 |
| 何度も旅行した | 34.4 |
| 1カ月以上1年以下滞在した | 15.4 |
| 1年以上滞在した | 21.2 |
文化意識の分布構造
日本文化は特殊か
| 日本は世界でもまれな特殊文化を持つ | 8.1 |
| すべての社会の文化は特殊で、日本だけが特殊なのではない | 91.7 |
「外国」という言葉を聞いて思い浮かべる国
| アメリカ | 49.5 |
| ヨーロッパ諸国 | 21.9 |
| アジア諸国 | 1.9 |
| イギリス | 1.9 |
| オーストラリア | 1.7 |
| ドイツ | 1.1 |
| 中国 | 1.1 |
| 韓国 | 0.9 |
| その他の国(具体的国名をあげた) | 4.5 |
| 日本以外のすべての国 | 15.6 |
日本の民族的将来像
| 単一民族の社会であるべき | 6.7 |
| ある程度、他の民族の人たちを受け入れるのも仕方がない | 34.1 |
| なるべく、他の民族の人たちを受け入れるべき | 59.1 |
どのような差別が強いか(平均点。点数が少ないほど、その次元の差別が強いと回答者は考えている)
| 人種や民族による差別 | 1.89 |
| 学歴による差別 | 1.98 |
| 性別による差別 | 2.03 |
| 職業上の地位による差別 | 2.16 |
| 身体上の特徴による差別 | 2.16 |
| 被差別部落に対する差別 | 2.43 |
階層の違いなどにかかわらず、日本人全体に共通する日本文化があるか
| ある(階層の違いは大したことではないから) | 80.1 |
| ない(階層の違いは相当大きいから) | 19.9 |
どの集団に属していることが重要か(平均点。点数が低いほど、回答者はその集団の重要度が高いと考えている)
| 隣近所の一員であること | 2.98 |
| 住んでいる地方の一員であること | 3.22 |
| 日本人であること | 2.45 |
| 人類の一員であること | 1.89 |
誰が「日本人」であるかを決める基準
| 国籍 | 19.6 |
| 血統 | 11.4 |
| 文化・言語の理解 | 8.8 |
| 長期居住 | 4.1 |
| 上記の最低一つの基準を満足 | 11.4 |
| 本人の意識 | 36.6 |
| 無回答ないし複数回答 | 8.1 |
日本人と西洋人の間に優劣はあるか
| 日本人の方が極めて優れている | 1.5 |
| 日本人の方がやや優れている | 5.1 |
| 同じだ | 26.5 |
| 日本人の方がやや劣っている | 6.2 |
| 日本人の方が極めて劣っている | 1.5 |
| そのような比較は出来ない | 59.3 |
日本と西洋の制度や習慣の間に優劣はあるか
| 日本の方が極めて優れている | 1.3 |
| 日本の方がやや優れている | 4.9 |
| 同じだ | 19.2 |
| 日本の方がやや劣っている | 15.6 |
| 日本の方が極めて劣っている | 3.1 |
| そのような比較は出来ない | 56.0 |
「文化」の定義
| 伝統的な習慣や考え方 | 36 |
| 芸術・芸能や学問の分野での活動や成果 | 10.9 |
| 一定の人々の暮らし方や生活様式 | 27.7 |
| 社会や集団の持っている価値観 | 21.7 |
| その他 | 3.8 |
日本対外国の国際試合に対する態度
| 熱心に日本チームを応援 | 27.5 |
| どちらかと言えば日本びいき | 53.6 |
| 勝ち負けに関心がない | 16.7 |
| 外国チームを応援 | 2.2 |
子どもが「外国人と結婚したい」と言ったらどうするか
| 子どもが選んだのだから賛成 | 53.5 |
| 外国人との結婚には原則として反対 | 4.8 |
| どの国の人かによる | 4.8 |
| 人柄が自分の好みに合うかどうかによる | 33.7 |
| その他の条件次第 | 3.3 |
日本人は集団主義的で欧米人は個人主義的か
| まったくその通り | 11.6 |
| 大体その通り | 60.8 |
| あまりそうではない | 23.1 |
| 全然間違っている | 4.5 |
無人島であった四人は、どのペア同士で話が合うか(詳細は質問表参照)
| 同じ国の人同士 | 27.2 |
| 同じ階層の人同士 | 72.8 |
「社会的属性」と「文化意識」の関係
以上はすべて単純集計のまとめであるが、この調査の最終的な目的は、どのような社会的立場にいる人たちが、どのような文化意識を持つかを調べることにある。社会的属性の文化意識への影響を考えるわけである。このような分析は始めたばかりなので、その中から3つの例を挙げるにとどめる。
「外国」意識と海外体験
「外国」という言葉を聞いて、どの国を想像するかという問いに対して、予想通り「アメリカ」を選んだ人が最も多く、その回答者の約半数を占めた。これらのいわば「アメリカ派」と対照的に、他の国を選んだり、「日本以外のすべての国」と特記した人などを含めた、残りの約半数のいわば「非アメリカ派」との間に社会的属性に関する違いがあるだろうか。全般的に見ると、海外に数多く旅行したり滞在した人たちの方が「非アメリカ派」になりがちであり、海外を訪れたことがなかったり、一回程度の旅行しかしたことのない人ほど「アメリカ派」になりがちだという傾向が見られた。性別や年齢はあまり関係がなかった。
| 「外国」という言葉で想像する国 | 海外体験度 | ||||
| なし | 一度旅行 | 数回旅行 | 1年以下滞在 | 1年以上滞在 | |
| アメリカ | 64.2 | 52.7 | 50.8 | 34.9 | 45.5 |
| アメリカ以外 | 35.8 | 47.3 | 49.2 | 65.1 | 54.5 |
「日本人」の基準と職場の規模
「日本人」をどのような基準によって定義するかという質問に対して、「自分を日本人だと思っている人が日本人だ」という選択肢に回答が最大多数を占めた。国籍、血統(民族)、文化理解度、居住期間など、観察者が対象者の外的な特徴によって判断するのではなく、対象者当人の内的志向を基準とすべきだという意見が最も多かったわけである。対象者の外的な特徴が観察者の基準に基づいているすれば、内的志向は対象者自身の基準によって選択されると考えられる。そうだとすれば、外的特徴を基準とすべきだと回答した人たち(外的特徴派)と内的志向を基準とすべきだと回答した人たち(内的志向派)の社会的背景に違いがあるだろうか。いくつかの変数を検討したところ、回答者の職場の規模による影響があるかもしれないという仮説が生まれた。その根拠は次の分布表にある。
| 「日本人」を 決める基準 | 職場の規模 | |||
| 中小企業社員 | 地方公務員 | 大企業社員 | 国家公務員 | |
| 外的基準(a) | 58.6 | 57.6 | 65.4 | 78.3 |
| 内的基準(b) | 41.4 | 42.4 | 34.6 | 21.7 |
(b)「自分が日本人だと思っている人が日本人だ」と回答した人の割合
(a)それ以外の基準(国籍、血統、文化理解度、居住期間など)をあげた人の割合
中小企業に勤めている人たちや地方公務員の間では、「自分を日本人だと思っている人が日本人だ」という内的志向基準を選ぶ人が多く、大企業勤務者や国家公務員の間では外的特徴を基準として選ぶ人が比較的多かったという関係が観察された。
差別の強度感に関する性差と海外体験度差
どういうタイプの差別をどの程度強いと感じているかは、人によって違う。その感じ方の強さを差別の強度感と呼ぶとすれば、それはその人の持つどのような社会的属性によって影響を受けるだろうか。この調査で取り上げた6つのタイプの差別強度感とさまざまな属性変数との相関関係を調べたところ、人種・民族に対する差別と被差別部落に対する差別については、海外体験度が影響を持っていることが推測された。海外体験が豊かなほど、これらの差別が強いという感じを持つ人が多い。一方、性別による差別、職業による差別、学歴による差別、身体上の特徴に関する差別については、性差が強い。女性の方が男性よりも、このような種類の差別が強いと感じている。年齢など他の変数との関係は薄かった。これらの関係の一部を一覧化するため、ガンマ相関係数を表示する。
| 差別のタイプ | 社会的属性 | ||
| 海外体験度 | 性別 | 年齢 | |
| 人種・民族 | *-0.257 | 0.135 | -0.142 |
| 被差別部落 | *-0.212 | 0.005 | -0.136 |
| 性別 | -0.169 | *0.283 | -0.017 |
| 学歴 | 0.027 | *0.243 | 0.071 |
| 職業 | -0.008 | *0.209 | 0.033 |
| 身体 | -0.034 | *0.209 | 0.048 |
***
さらに検討すべき興味深い相関関係が、あちこちに見られますが、この中間報告では、文字通りその一端を提示するに留めておきます。ここからが重要な分析段階で、資料の収集と平行しながら、少しずつ戦略を磨きたいと思っています。ご意見があれば、次のホームページへ行き、「掲示板」へ書き込んでください。
http://www.latrobe.edu.au/www/socpol/sugimotoj.htm
いろいろありがとうございました。

